言語と文化 教材No.1(1)


 連濁(1)−3つの規則−

1.複合語について
  複合名詞に含まれる単語
   (1)N+N
    ひなまつり、砂けむり、一人旅、昼ごはん、テレビ番組、野菜サラダ、
    横断歩道、証明写真、「       」、「       」・・・・・
   (2)N+N+N
    肩かけかばん、駐車禁止区域、バイク専用道路、「       」・・・・
   (3)N+N+N+N
    書類脱落防止ロック、書道教室体験入学、「        」
   (4)N+N+N+N+N
    学校給食指定専門工場、市内全域空室情報センター、「        」

  ☆複合語を構成する「名詞(N)」はみな同じ?(→性質の違い)
   @カタカナ 「     」「     」「     」  
    (外来語)cf.和製英語
   A漢字   「     」「     」「     」
    (漢語) cf.和製漢語
   Bひらがな 「     」「     」「     」
    (やまとことば)

2.複合語の発音
 ☆複合語では濁点が加わることはありますが、
  いつもとは限りません。
  →「連濁の規則」を説明できますか?
  (複合語の中で発音が変わる現象)
  ゴミ箱  [ゴミ+ハコ]  → 「○ごみばこ」「×ごみはこ」
   紙屑   [カミ+クズ]  → 「×かみぐず」「○かみくず」
  屑籠   [クズ+カゴ] →「×くずがご」「○くずかご」

花「はな」、 声「こえ」
(5)草花(くさ・はな)「くさばな」 ←連濁
  押し花(おし・はな)「おしばな」   (他の言葉につながるとき、
(6)笑い声(わらい・こえ)「わらいごえ」   濁点がつく発音になる現象)
  歌声(うた・こえ)「うたごえ」
(7)連濁をおこす語
長靴(なが・くつ⇒ながぐつ)、
     げた箱、甘酒、荷車、百円玉、昔話、流れ星、
     一人暮らし、神頼み、雪解け、足踏み、土砂降り、田舎侍、
(8)連濁をおこさない語
  色水(いろ・みず)、野球馬鹿(いろ・ばか)、朝もや(あさ・もや)、
  朝霧(あさ・ぎり)、田舎者(いなか・もの)、英会話学校(かいわ・がっこう)

【例題3】(7)と(8)から、連濁の規則を説明しなさい。
次の場合は連濁しない(そのまま単語をつなぐ)
  ・後続の語に「        」が付いている
・後続の語が「み」や「も」など「               」
  →後続語の語頭が有声音(未学習(目次1))の時 cf.有声音←→無声音

  反例? (9)後続の語が無声音でも連濁をおこさない語「     」
       ガラスケース(×ガラス+ゲース)、
       カラーテレビ、草サッカー
     (10)後続の語が無声音でも連濁をおこさない語「      」
       入学試験(×にゅうがく+じげん)、放送作家、
       特別急行、訪問販売、人面犬

【例題4】(7)−(10)から、どういう語が連濁をおこすか、規則化しなさい
連濁の規則 条件@後続語の語頭が「       」から始まる語で、
            Aその語は「       」である。

  反例?  (11)花言葉(はな+ことば)→×はなごとば
         ぬりかべ、虫かご、ながそで、五寸くぎ、紙しばい、
         花ことば、首かざり、ざるそば、あらさがし、大さわぎ
  【例題5】(7)−(11)から「連濁の規則」を改定しなさい。
    条件@後続語の語頭が「       」から始まる語で、
      Aその語は「       」であり、
     Bその語中に「      」が含まれていないとき。

 【まとめ】次のリストを使って「連濁の規則@AB」を確認しなさい。
  立ち泳ぎ(    )、絵心(    )、歯車(    )、羽布団(     )、
 涼風(    )、窓ガラス(   )、専門書(    )、風上(    )、
 民間企業(   )、太刀筋(    )、雨雲(    )、女主人(    )、
  円高(    )、横長テレビ(    )、木々(    )、八重桜(    )、
 荒馬(    )、薄皮(     )、遅桜(     )、雨ガッパ(    )

 【復習1】次の単語はなぜ連濁するか、説明しなさい
     ガラスだな、ボール紙、ズック靴、電信柱、
 【復習2】次の語は、どこが反例なのか、説明しなさい。
     「なわばしご」、「傘たて」、「干ししいたけ」

3.連濁の例外
 【例題6】広島の「橋」は連濁の規則通りに濁るか?
   規則通りのものとそうでないものに分け、その理由を考えなさい。

駅前大橋、大正橋、東大橋、仁保橋、平和橋、黄金橋、駅西高架橋、稲荷大橋
東廣島橋、神田橋、柳橋、牛田大橋、上柳橋、平野橋、常葉橋、工兵橋、鶴見橋
御幸橋・宇品橋、平和大橋、南大橋、新明治橋、こうへい橋、萬代橋、こうへい橋
元安橋、南千田橋、本川橋、西平和大橋、住吉橋、新住吉橋、大芝橋、北大橋、
空鞘橋、舟入橋、三篠橋、相生橋、中島神崎橋、吉島橋、天満橋、観音橋、
昭和大橋、緑大橋、観船橋、廣瀬橋、横川新橋、新観音橋、中広大橋、広電天満橋
昭和大橋、横川橋、旭橋、三滝橋、山手橋、新庄橋、祇園大橋、己斐橋、新己斐橋
竜王橋、新旭橋、庚午橋、新竜王橋、新三滝橋

  疑問(これも規則化できるか、それとも完全に反例か?)
 (12)入学試験(にゅうがく・しけん)は連濁しないのに、
     株式会社(かぶしき・がいしゃ)は、なぜ連濁する?
  (13)麦畑(むぎ・ばたけ)は連濁するのに、
     田畑(た・はた)はなぜしない?

  ☆「連濁の規則」を完全にするため、上の疑問を「規則」に取り込む作業
  【例題5】どういう場合に「連濁の規則」から外れるのか、考えなさい。
  (13)2つの語が並列的関係にあるときは、@〜Bの条件に合っていても連濁しない。
      親子(おや・こ)、目鼻(め・はな)、足腰(あし・こし)、
      白黒(しろ・くろ)、「       」
  (12)後続の語が漢語(Aの違反)でも、慣用的にそう読まれる場合
    (少数の漢語に限られるが・・・)は連濁できる(?)
      運送会社(うんそう・がいしゃ)、青写真

 要するに、今やったことは、「何かよく分からない現象(連濁)」に対し、
単純なところから規則化していき、分かる部分を増やしていく作業。
反例(分からない部分)が出れば、さらにそれを規則化(分かる部分に)していく。
反例を完全になくす(全部が分かる部分)ことはできないので、
改訂を繰り返していく作業が学問の基本。
(「解答のない問題」を扱うのが大学の授業。)
 
 ☆なぜ「連濁」という現象が日本語に存在するのか?
(なぜ日本語では、後続の語にテンテンが付いたりするのか?)
例えば、英語などではそんな現象はないのに。
    hot+cake ⇒ ×hotgake
まず、英語では、濁音(テンテン)で始まる語が多いので、間違えやすい。
   c(キ)ap ⇒ g(ギ)ap、 pig ⇒ big、 try ⇒ dry
したがって、連濁することはない。ところが、日本語では、濁音(テンテン)で始まる語は漢語と外来語だけである。
  電話、雑誌、辞書、言語、自由、文章、学者、
    ガレージ、ダイビング、バス、ビル、ボール
  日本語の基本をなす「ひらがな語(やまとことば)」は必ず清音で始まる。
これらは、テンテンが付いても間違えない。
     くさはな⇒くさばな (日本語には「ばな」という語がない)
     あおそら⇒あおぞら
   したがって、「やまとことば」に限り、連濁が起こると思われる。

語頭が清音 語頭が濁音
和語 はし、ふろ、した、しっとり
みぞ、あほ、おおきい、かね
なる、まんなか、すけべ、のら
漢語 
西洋語
徳、法、勘、水晶、鉄、火星
試験、特急、社会、未来、
可能性、フィルム、サラダ
学校、文化、道徳、、概念、
電車、仁義、現在、蓋然性
ビール、ガラス、ゲーム

 * べろ、どぶ、げろ、じっとり 、 どじ、(ど)でかい、どなる、
   どまんなか、どすけべ、どら

 【応用】連濁の規則の例外を探しなさい
  和語 「なわばしご、傘たて、干ししいたけ                」
  漢語 「和菓子、運送会社、青写真、関西高校、夜汽車、城代家老、
       年季奉公、貧乏所帯、一人扶持、                」
  西洋語「銀ギセル、雨合羽、?豚ギムチ                 」