いまなぜ憲法「改正」なのか

                     

 現在国会の中では、近年になく憲法「改正」の機運が高まっています。自民党は、結党50年目に当たる今年11月に、新憲法草案を提起することを目指し、着々と準備を進めています。野党第1党の民主党は「創憲」、政権与党の公明党は「加憲」と称し、改憲の立場です。また衆参両院に設置された憲法調査会は、本年4月に憲法「改正」が多数意見であるとの報告書をまとめました。

 さまざまな改憲案が作られていますが、ねらいはただひとつ憲法第9条の「改正」にあると言って過言でありません。では、なぜいま永田町で、このように改憲の機運が盛り上がっているのでしょうか。

 第一の要因として、アメリカの要求があることは、間違いありません。冷戦後アメリカは、グローバルな規模で市場経済=自由貿易体制を維持することを、最大の国益としています。この戦略に敵対する国に対しては、武力行使を厭わないという先制攻撃症候群が特徴となっています。そのために、同盟国の力を総動員することが目指されているのです。日本政府は、この露骨な要求に唯々諾々と応じようとしていますが、そのためには憲法第9条が邪魔になります。集団的自衛権の行使を可能にするため、憲法「改正」が浮上しているのです。

 もう一つの要因として、国内からの要求があることを忘れてはなりません。すでに経済同友会・日本商工会議所・日本経団連の財界3団体は、憲法「改正」を求める意見書などを発表しています。この背景には、1990年代以降日本の大企業がとみに多国籍化し、世界第2位の海外資産を保有国となったという事情があります。自前の“軍隊”を出すことによって、海外の利権を守りたいとの要求が急速に高まっているのです。

 では、もし憲法が変えられてしまったら、私たちの暮らしはどうなるでしょうか。

 これまで戦争をしない特別の国だったのが、戦争するのが当たり前の「普通の国」になります。アメリカの要求に応じて、“自衛軍”は地球のどこへでも出かけて行きます。米軍への後方支援のみならず、アメリカと一体になって「敵国」に対し攻撃を行います。当面徴兵制は敷かないと自民党案も述べていますが、そのかわり国民に「国防」の「責務」が負わされることになっています。また、国内では軍産複合体制が進展し、軍事予算が肥大化します。肥大化した予算をまかなう為に増税路線が強行されるでしょう。企業の多国籍化・国内産業の空洞化は歯止めがかからず、貧富の差がいっそう拡大するでしょう。リストラ・若者の就職難、自殺者・ホームレスの増大が続き、犯罪の多発化など、治安は悪化しますが、それに対しては、住基ネットや盗聴法、個人情報保護法などによる監視体制が強められます。

上記の未来図は、決して荒唐無稽な予想ではありません。 「この国のかたちを変える」というのが、改憲派の合言葉です。そのような国に、あなたは住みたいですか。