ご挨拶

                            

 「憲法9条を守る愛媛県民の会」の代表幹事のひとり矢野です。本日は、3連休の最終日でお休みのところ、多くの方に参加いただきありがとうございます。

 

「憲法9条を守る愛媛県民の会」は、憲法があぶない、私たちも何かをしなければとの危機感に背中を押されるように、昨年6月に発足しました。それから、1年と1月が経過しました。

 

 この1年間を顧みても、憲法「改正」をめぐる情勢は、いっそう緊迫の度を加えております。政権政党の自由民主党は、結党50年目に当たる今年11月に、新憲法草案を発表することを目指し、小刻みに作業を積み重ねてきましたが、77日には同党新憲法起草委員会(委員長・森前総理)は改憲の「要綱案」を発表しました。9条の2項を改正し、「自衛軍」の保持を明記するとしています。また衆参両院に設置された憲法調査会は、本年4月に憲法「改正」が多数意見であるとの報告書をまとめました。

 

 国際的状況も、混沌としています。昨年11月米大統領選挙で、ブッシュが再選を果たしました。日本の自衛隊は、依然としてイラクに居座っています。撤退する見通しは、立っていません。米英を中心とする占領に対する、イスラムのひとたちの反感はつのっています。つい最近ロンドンで同時テロが起こり、たくさんのイギリス市民が犠牲になりました。アジアの諸国では、日本軍国主義の復活を憂える大規模なデモがあいつぎました。事態は混迷の度を加えています。確実に言えることは、憲法改悪を求めるアメリカの圧力は今後強まりこそすれ、弱まることはないということです。

 

 この間「憲法9条を守る愛媛県民の会」は、9条を守りその意義を輝かせるため、活動を展開してきました。会員総数は、1400名を突破しました。毎月第2土曜日には例会を開くとともに、毎月9日の日には、街頭で宣伝活動をして参りました。県内には、20数ケ所の「9条の会」(準備会を含む)が誕生しました。これらの会から依頼があった場合には講師を派遣する「出前講座」も20を超えました。また、今年の53日憲法記念日には、統一集会を開こうと「9条の会」が呼びかけた結果、80団体以上の賛同を得て「5・3愛媛憲法集会」が成功裡に開催されました。

 

 しかし「憲法9条を守る愛媛県民の会」の活動は、憲法の改悪を阻止するという1点にかかっております。その観点からすると、まだまだ十分とはいえません。

 

 憲法改悪を危惧する県内の各勢力は、分散しています。この力を総結集するためにいっそう奮闘する必要があります。教科書問題や教育基本法改悪に反対する運動とも連動してゆきましょう。

 

 今回の第2回総会に際して、記念講演を静岡大学人文学部の小沢隆一先生にお願いしました。小沢先生は、憲法学を専門とし、憲法「改正」問題に関して各種の新聞や雑誌で改憲反対の立場から論陣を張っている若手の論客であります。

 

 私が「静岡に小沢あり」と注目したのは、5年前からです。『現代日本の法—「改革」を問う—』(法律文化社、2000年)という本によってでした。当時、あらゆる方面で「改革」ばやりでしたが、これらが全体としてどの方面を向いているのか、さっぱりわかりませんでした。それをこの本は、見事に整理されていました。憲法学の独壇場といえる「平和と安全保障」の問題だけでなく、「行政改革」や刑事・治安法制改革、さらには福祉・労働法制や教育改革にまで視野を広げ、また外国の文献、政府や財界の政策文書等にも目配りした丹念な労作です。そして決して難解では無く。分かりやすい言葉で読者に伝えようとしている。私はすっかり感心してしまいました。

 

 本日は、「ほんとうに憲法をかえてもいいのか?」というテーマで講演していただきます。目下進行中の「改憲問題」の本質について、分かりやすい言葉で解明してくださるでしょう。

 

 さきの5・3集会に講師としてお招きした浅井基文広島市立大学平和研究所所長は、「善意の改憲論者」にも、対話の環を広げていく必要を語られました。「善意の改憲論者」とは、何らかの憲法「改正」には賛成だが9条の「改正」には反対している人達です。

 

 本日の講演がそのきっかけになることを期待しております。

2005年7月18日)