仙波さんを招いた講演会を開催して

                            

 さる617日午後6時20分、愛媛大学の共通教育大講義室が、学生や市民で満員になりました。それどころか、席に着けない者も多数いて、立ち見の人もいました。翌日の新聞報道によると450名の参加者であったそうです。聴衆の余りの多さに、私語や雑談など講師の話が聞きにくいのではないかと私は心配しましたが、仙波さんの話がはじまるや、杞憂であったことがわかりました。会場は水を打ったように静まりかえったのです。深刻な内容の話を、ときにユーモアを交えて語る仙波さんの話を一言も聞き洩らすまいと、聴衆は一身に耳を傾けていました。

 集会の名称は、「愛媛県警捜査費不正支出問題と内部告発—愛媛県警で何が行われてきたか—」、主催は「内部告発と住民運動を考える講演会」実行委員会、この講演会を開催するために集まった愛媛大学の学生有志の団体です。企画から当日の運営まですべて担ってくれた学生諸君の働きに、私は舌を巻く思いでした。他に日本科学者会議愛媛支部および愛媛大学文理等教職員組合も共催として名を連ねました。当初JSAの事務局として、県警の不正支出をテーマにした例会を交渉していたのですが、愛媛大関係者で他にも同様の企画があることが分かり、急遽共同開催という形にしたのでした。

 講師の仙波敏郎さんは、今年の120日に現職警官として全国ではじめて捜査費をめぐる警察の不正を告発した人物です。講演の中で氏は、偽造領収書作成を拒否したため30数年にわたって巡査部長に留め置かれていること、捜査費不正支出によるウラ金は氷山の一角であることなどを具体的に話されました。また、実名告発したあと、県警から報復として拳銃を取り上げられ、全く仕事のない部署に配置転換されたと、語りました。聴衆は、新聞やテレビの報道で耳にはさんだことはあるものの、ご本人から語られる具体的な話に衝撃を受けていたようです。

 またオンブズえひめの中心メンバーとして、当初からかかわって来られた今川正章弁護士にも、語っていただきました。今川弁護士は、全国的な動向も交え、この問題をめぐる一連の経過と今後の課題をわかりやすく話されました。

 最後に会場から出された「警察をどこまで信用してよいのか」という質問に対する、仙波さんの「ヒフティ、ヒフティです」という苦渋に満ちた答が、印象的でした。

 講演を聞いて、われわれは、警察のウラ金の広がりと底の深さの一端を覗いたような気がします。警察に蔓延した不正経理・ウラ金の問題は、税金が不正に使われている問題であると同時に、捜査能力の低下・治安の悪化にもつながっており、われわれ住民にも直接に関係する問題でもあります。これを一過性の問題に終わらせてはならないと強く感じました。