ご挨拶

                           

 私は、憲法9条をまもる愛媛県民の会の代表委員の1人で、矢野と申します。本日は、憲法9条をまもる愛媛県民の会12月例会に多数お集りくださいましてありがとうございます。

 

 このところ、世上を騒がせている話題といえば、姉歯元建築士によってマンション等の耐震強度が偽装されていたという問題に尽きるでしょう。事件の経緯は、みなさんよくご存じだと思いますから、詳しくは申し上げません。連日これに関するニュースを見たり聞いたりして感じるのは、一体この国はどうなってしまったのかという思いです。テレビの映像等を見ている限り、問題になったマンションは、外観はたいそう立派です。豪華といってもいいくらいです。ところが目に見えないところで手抜きがなされているというのです。この偽造マンションのように、日本は、目に見えない奥深いところで崩れはじめているのではないかとの思いを禁じえないのです。

 

 さて、先月22日に、自民党の結党50周年記念大会が開かれました。あの杉村大蔵議員がエイエイオーと音頭をとったそうです。席上、新憲法草案が正式に発表されました。自主憲法制定は、自民党の結党以来の公約でしたから、関係者はやっとここまでこぎつけたかと感慨を感じていることでしょう。しかし、そこには何が書き込まれているでしょうか。あとの講演でも触れられるかと思いますので、詳しくは申し上げませんが、憲法第9条第2項を削除して、“自衛軍”を明記するとしています。

 

 私が申し上げたいのは、さきほど述べた耐震強度偽造問題と自民党が憲法「改正」草案を作成したということの間には、根を共通にするものがあるということです。アメリカが1993年以降毎年「年次改革要望書」なるものを日本政府に対してつきつけて、郵政民営化をはじめあらゆる分野の規制緩和を要求してきたことは、このところ知られるようになりました。「姉歯マンション」の契機となったのは、1998(平成10)年の建築基準法改正でしたが、これもまた、この「年次改革要望書」にのっとって行なわれた「改革」のひとつであったということです。

 

 憲法「改正」は、「年次改革要望書」には書かれていないようですが、アメリカの首脳(パウエル国務長官やアーミテージ国務副長官―いずれも当時)が日本に対して露骨にこれを迫ってきたことは周知のことです。もしこのようなアメリカの要求に乗って憲法「改正」がなされたなら、いったい日本にどのような将来をもたらすことになるのか、皆さんによくお考えいただきたいと思います。

 

 なぜいま憲法「改正」が声高に叫ばれているのでしょうか。海外からの要因としてはこのようなアメリカの要求があり、そして日本国内の要因としては政界の大スポンサーである財界の要求に端を発していると、私たちはくりかえし指摘してきました。トヨタ自動車の奥田碩氏が会長をつとめる日本経団連「国の基本問題調査会」は、今年の1月、憲法92項を「改正」し自衛隊の保持と集団的自衛権の行使を明記するよう求めた報告書を提出しました。日本商工会議所や経済同友会もあい前後して、憲法「改正」を求める提言を提出しております。しかし、このように日本の軍事大国化をもとめる動きは、日本経済界あげての要求でしょうか。私にはそうは思えないのです。

 

 本日ご講演いただくことになりました品川正治さんは、経済同友会の副代表幹事等を歴任され、終身幹事でいらっしゃいます。財界の重鎮のおひとりと言って過言でないでしょう。その品川さんが、日本経団連の改憲や武器輸出を求める報告書を厳しく批判し,「(戦争は)もう二度としない」と宣言されたということを聞いて、財界の良心ここにありと強く感じました。経済界のかたがたの中に、品川さんのお考えに共鳴するひと達が数多く存在するということを私は確信します。

 

本日は、品川さんが憲法に寄せる熱い思いを、みなさんと一緒にうかがって、私たちの今後の糧にしたいと思います。

                          (20051217日)