青年期にはいろいろな悩みがあります。親から何か言われると無性にいらだったり、他人と自分の見方や考え方のズレで悩んだりもします。また、自分が他人からどのように見られているのか気になったり、他人との人間関係でつまづいたり、自信がなく自己主張できない自分が嫌でたまらなかったりします。
青年期は自分の内面に関心をもつ時期でもあります。これらの多くは誰にでもあることです。こうしたことが青年期特有の心理と関係しています。青年なら誰しも経験することがわかれば、それだけでも安心できますし、対処できます。
悩むことは決して悪いことではありません。人間誰しも悩みながら成長するものです。ですから、悩むことを避けないで前向きに進んでもらいたいと思います。青年期は自分の人生を切り開いていく時期でもあるのです。

この講義では、青年期の心理的特徴、発達課題、青年期の不安や悩みと対処法などについて述べます。この授業を受けることによって、青年期の真っただ中にいるあなたが、自分自身について知り、今ある現実問題から目をそむけないで正面から向かえるようになってもらえたら幸いです。

 講義の概要 

この講義では、人のこころの働きを全体的にみる観点と、機能別にみる観点の両方からとらえ授業を進めます。

T 青年への問いの構造
第1章 青年心理学の特質と方法
  1)青年心理学がめざすもの
  2)青年心理学への一般的な疑問
  3)「青年」ということば
  4)3つの視座の分離と統合
  5)大人にならない青年
  6)心理的離乳
  7)青年心理学の2つの源流

第2章 青年の生活感情と自我感情
  1)青年の生活感情
  2)青年の自我感情

第3章 青年期の恋愛
  1)愛と恋愛の違いを確認する
  2)7つの視座の問いによる青年期恋愛の探究
  3)恋愛中に生ずるアイデンティティ拡散
  4)ライフスタイルに位置づけられた青年期恋愛
  5)男の中の女らしさ(アニマ)と女の中の男らしさ(アニムス)

第4章 ライフ・サイクルの中の青年期
  1)自己分析と自分史制作
  2)青年の自己分析のためのひとつの技法
  3)自分史の構想
  4)結び:世代的反抗としての成熟拒否

U 青年期の発達心理
第1章 青年期−その発達段階と課題
  1)青年期の発達過程
  2)ハヴィガーストの発達課題論
  3)コールバーグによる道徳性の発達段階
  4)マーシャのアイデンティティ・ステイタス論

第2章 アイデンティティということば
  1)所属感・安定感の基礎としての「姓名」
  2)発達的アイデンティティ
  3)性役割のアイデンティティ
  4)職業的アイデンティティ
  5)歴史的アイデンティティ
  6)その他

V 青年期の臨床心理
第1章 青年期の不安と悩み
  1)青年期的状況−サーカスの空中ブランコ
  2)現代の心理歴史的状況
  3)アイデンティティ形成への援助
  4)現代青年こころ模様−学生相談の立場から

第2章 アイデンティティ形成の障害
  1)ある高校生の不登校
  2)不登校生徒の内的世界と矛盾
  3)青年期不適応の類型
  4)自己臭妄想症の典型例

第3章 青年期の非行と逸脱行動
  1)やまあらしのジレンマ−2つの日記
  2)非行の原因と援助関係の基礎
  3)家出をくり返す3人の少女たちの典型事例
  4)青年期の活性化のために