講義科目紹介

 都市環境学<2007前期>

講義方針 都市(構造)に起因する環境問題と、そこに住まう人々の心理に影響する環境要素

 近年、都市の存在そのものが引き起こす環境問題が顕在化し、都市のあり方そのものを考え直さなければならない状況になっている。すなわち、様々なエネルギー消費と都市の構造に起因する“ヒートアイランド現象”である。この環境問題に対しては、エンド・オブ・パイプ対応ではなく、トータルシステム的な対応が必要となっている。
 そこで、ヒートアイランド問題とその対応を考えることを入り口として都市の存在が環境に及ぼす影響を認識し、そこから都市交通など都市に関連する様々な環境問題を考えていくことで、“環境と折り合いを付けてゆける都市の姿”とは何かを探求していく。
 また、都市の環境が人々の心理に影響を及ぼすことから、都市における“自然的環境”の存在や、“都市景観”が、人々の心理に与える影響を考えていき、その面からの都市のあり方を考えていく。
参考文献 尾島俊雄『ヒートアイランド』(東洋経済新報社、2002)
都市環境学教材編集委員会編『都市環境学』(森北出版、2003)
西村幸夫・他編著『都市を保全する』(鹿島出版会、2003)
家田仁・岡並木編著『都市再生 交通学からの解答』(学芸出版社、2002)
和田安彦・三浦浩之共著『水辺が都市を変える』(技報堂出版、2005)
西村幸夫『環境保全と景観創造』(鹿島出版会、2005)
講義予定
都市と環境との関わり−生き物としての都市・都市の代謝
都市の有り様に起因する環境問題−ヒートアイランド
ヒートアイランドがもたらすもの−局所的豪雨・都市型水害
ヒートアイランド対策−都市形態・地表面被覆の改善:人工排熱の低減:ライフスタイルの変更
ヒートアイランド&温暖化対策−自動車交通&TDM&TOD&LRT&EST
環境と共生する都市−広島電鉄のLRT化を例として
都市の身近な環境と人々の心理−水辺と緑の効用
都市景観と人々の心理−景観からのまちづくり
講義内容および提示資料
  <2007-01> ガイダンス
 (1) 講義要項の説明
 (2) 講義予定案の提示
 (3) テキストの紹介

<2007-02> 都市と環境との関わり
 (1) 都市がもたらす環境影響の認識
 (2) 都市と環境との関わり〜都市の変遷と将来 都市と環境との関わり 
  〔配付資料:都市と環境との関わり〕

<2007-03> 都市における環境問題の歴史
 (1) 大阪市に見る環境問題の歴史
  〔配付資料:大阪市の環境問題の歴史〕
 (2) 都市と環境との関わり〜都市の環境問題・都市代謝システム

【課題】自分の住んでいる都市(まち)の環境白書で示されている環境の状況などを見た上で、以下のことについて述べよ。
 @ 自分の住んでいる地区の環境の状況
 A その現状と、これまで地区の環境の状況に対して持っていた自分のイメージとの合致点・相違点
   文字数 1,000字程度(A4用紙1枚、表紙なし、word可)
   提出期限 2007年5月8日(火)


<2007-04> 都市化とヒートアイランド
 (1) ヒートアイランド現象の現状
  【VTR:NHKスペシャル'02「東京ヒートアイランド」】
  〔配付資料:ヒートアイランド現象とは?〕
    【環境省;ヒートアイランド対策推進のために(パンフ)】

    【環境省;ヒートアイランド現象(パンフ)】
    【環境省;ヒートアイランド対策(パンフ)】
 (2) 関東・近畿地方におけるヒートアイランドによる気温変化
  〔配付資料:都市の気温の変化【気象庁;ヒートアイランド監視報告(平成18年夏季−関東・近畿地方)平成19年3月】〕
 (3) ヒートアイランド現象による環境影響項目
  〔配付資料:都市における気温上昇(ヒートアイランド現象)による環境影響項目【環境省;平成15年度ヒートアイランド現象による環境影響に関する調査検討業務 報告書】〕
 (4) 広島市街地のヒートアイランド(千葉大 近藤先生のレポートより)

<2007-05> ヒートアイランド対策(1)〜概要
 (1) ヒートアイランドの影響
  @健康影響(健康影響、熱中症、ウイルス感染症)
  A生態影響(暖冬化による変化)
  B気象変化等(集中豪雨、都市型水害)
 (2) ヒートアイランドの要因
  @人工排熱の増加
  A地表面被覆の変化(地表面の人工化と緑・水面の減少)
  B都市形態の変化(高層化、熱の滞留など)
  Cライフスタイルの変化
 (3) ヒートアイランド対策 ヒートアイランド対策の考え方 
  〔配付資料:主なヒートアイランド対策メニュー【環境省ヒートアイランド対策(パンフ)】〕
  〔配付資料:東京都におけるヒートアイランド対策の体系【東京都;ヒートアイランド対策取組方針(平成15年3月)】〕
  〔配付資料:ヒートアイランド現象の原因【東京都;ヒートアイランド対策取組方針(平成15年3月)】〕
  〔配付資料:ヒートアイランド対策の基本的考え方【東京都;ヒートアイランド対策取組方針(平成15年3月)】〕
  〔配付資料:ヒートアイランド対策大綱〕

<2007-06> ヒートアイランド対策(2)〜人工排熱の低減・地表面被覆の改善
 (1) 対策メニュー
  〔配付資料:各省施策のまとめ【環境省ヒートアイランド対策(パンフ)】〕
 (2) 人工排熱の低減  人工排熱の低減
  @顕熱と潜熱
  A未利用エネルギー(温度差・排熱)
  BESCO事業
 
 (3) 地表面被覆の改善  地表面被覆の改善
  @屋上緑化
  〔配付資料:屋上緑化・壁面緑化による対策<図>「ヒートアイランドの対策と技術(森山著)」〕
  A反射素材、クールルーフ
  〔配付資料:クールルーフによる対策<図>「ヒートアイランドの対策と技術(森山著)」〕
  B保水性舗装、透水性舗装
  〔配付資料:東京都ヒートアイランド対策推進エリアと熱環境マップについて〕
  
  【VTR:ETV2002「ヒートアイランド 〜今東京で何が起きているか〜】

<2007-07> ヒートアイランド対策(3)〜都市形態の改善
 (0) ヒートポンプ〈前回講義の続き〉
  〔配付資料:「空気の熱でお湯が沸く」不思議<図>「ヒートポンプを探せ!(片倉・藤森著)」〕
 (1) 都市形態の改善〜緑地と水面
  @緑地の保全・創出
  A冷涼な空気の移動
  B熱発生源での緑化
 (2) 広島中心市街地での河川によるヒートアイランド現象緩和 クールスポット
  〔配付資料:緑地の保全・緑化の推進によるヒートアイランド現象緩和対策の具体例【国交省;緑地保全と緑化の推進によるヒートアイランド現象緩和効果について】〕
 (3) 名古屋市中心部のヒートアイランド対策の提案
  〔配付資料:名古屋ヒートアイランド対策への提言〕
  【VTR:「ヒートアイランド東京 Vol.2」〜風の谷と森が奇跡を呼ぶ〜(素敵な宇宙船地球号)】
 (4) 都市緑地を活用した地域の熱環境改善構想

【課題】広島市中心市街地広島市中心街区のヒートアイランド対策を立案せよ。
  ◇環境省の「クールシティ中枢街区パイロット事業」への応募をイメージ
  ◇配布した地図を活用し、施策を地図中に記入

  ◆提出物:提案書(A4、ワード)+提案図面(イメージ;A4)+施策配置図(地図、A4に折りたたむ)
  ◆提出期限:2007年6月5日(火)12:30 教務課

<2007-08> 地球温暖化対策とまちづくり〜現状(1)
 (1) 地球温暖化問題の再確認
 (2) 温室効果ガス排出量の変化
 参考:環境省「地球温暖化対策とまちづくりに関する検討会」報告書
 〔配付資料:「地球温暖化対策とまちづくりに関する検討会」報告書概要版〕

<2007-09> 地球温暖化対策とまちづくり〜現状(2)
 (1) 都市拡散の実態
 (2) 地方都市での諸機能郊外化の実態とその問題点
  地球温暖化対策とまちづくり
 〔配付資料:「地球温暖化対策とまちづくりに関する検討会」会議資料〕

<2007-10> 地球温暖化対策とまちづくり〜対応
 (1) 基本的考え方
 (2) 富山市の事例 検討会資料「富山市が取り組むコンパクトなまちづくり」
 〔配付資料:富山市が取り組むコンパクトなまちづくり「地球温暖化対策とまちづくりに関する検討会」会議資料〕

<2007-11> 地球温暖化対策とまちづくり〜LRT
 (1) PortlandにみるLRTシステム活用による自動車流入抑制 Portland triMet
 〔配付資料:Portlandの公共交通を重視した都市計画
 (2) 京都市におけるLRT導入の検討 参考:京都市「新しい公共交通システム」

<2007-12> 環境にやさしいまちづくりとしての広島電鉄のLRT化
 (1) 広島電鉄でのLRT化への取り組みと課題(2006LRT国際ワークショップより) 広電の取り組み例
 〔配付資料:広電「路面電車からLRTシステムへ」(2006LRT国際ワークショップ講演資料)〕
 (2) 広島商工会議所による「広島地域における総合交通体系のあり方」提言
 (3) ICカード導入と信用乗車システム 参考:路面電車とLRTを考える会へのリンク
 〔配付資料:都市交通施策と施設の体系図〕

【期末試験】広島市(含む近郊都市)を、地球温暖化対策で先進的な都市とするために実施すべき「まちづくり施策」を、短期的なもの(およそ10〜15年程度以内)と長期的なもの(およそ15年以上)に区分して、述べなさい。また、各施策の実施箇所を以下の地図上に明記しなさい。

《コメント》
 当初、講義する予定であった
  ◎都市の身近な環境と人々の心理−水辺と緑の効用
  ◎都市景観と人々の心理−景観からのまちづくり
については、「地球温暖化とまちづくり」で講義すべきと判断した内容が多かったため、講義できませんでした。
 これらについては、後期の『都市計画論』において講義したいと考えています。


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