ゼミ紹介「環境評価論」

1. テーマである「環境評価」とは

長谷川 弘

 あなたにとって大切なものは何ですか? その中で環境はどのぐらい大切ですか? 便利さと美しい景観ならどちらを選びますか? 私たちの日々の生活で、このような価値判断や決定を迫られることが多くなりました。

 特に、自然や公害など環境の大切さ(価値、重要性)を何らかの形で測り表現することが『環境評価』です。もし環境評価が時を逸せず科学的・民主的に実施されるならば、環境問題の多くを未然に防止あるいは合理的に解決するための大きな力となります。

 例えば、広島県でも「鞆の浦埋立て・架橋建設」、「細見谷大規模林道」、「広島高速5号線二葉山トンネル」など、環境評価をもっと積極的に取り入れていれば、これほど問題化しなかったのではないかと思われる残念な開発事業があります。そして八ッ場ダム、諫早湾干拓事業、普天間基地辺野古沖移転などの問題分析にも環境評価は役立つでしょう。

2. ゼミナールの目的

ゼミナールでは、これら広島県内外の実際の大規模公共事業や環境紛争事例を材料に、環境評価を行なう際の具体的道具となる次のような手法の基礎理論、応用テクニック、課題について習得・調査・研究します。

  • ① 環境アセスメント(環境影響評価、EIA、自主的ミニ・アセス)
  • ② 環境の経済評価(環境経済アセスメント、費用便益分析)
  • ③ 環境分野の行政評価・政策評価
  • ④ 環境問題解決のための情報公開や住民参加の仕組みづくり
  • ⑤ 時のアセスメント(再評価、事業仕分け、棚卸し)
  • ⑥ 戦略的環境アセスメント(SEA、多元的環境アセスメント)
ゼミの様子

3. ゼミナールの進め方

環境ゼミナールa(前期)

(1) 環境評価の事例や先行研究に関わる文献や参考資料を収集・輪読し、各自が特に関心・興味を持ったトピックスについて発表を行ない議論を深めます。

ゼミ風景④

(2) このような発表・議論を通じ、各自あるいはグループとしての具体的な研究テーマを明確にし、今後行う調査・研究に向けた「研究計画書」を作成します。

ゼミ風景①

フィールド見学(夏休み)

(3) 夏のゼミ合宿(一泊二日~二泊三日程度)も兼ね、環境評価の題材として県内外の環境現場や事業地を訪ねます。

ゼミ風景⑦ ゼミ風景② ゼミ風景⑥

環境ゼミナールb(後期)

(4) 設定したテーマと作成した研究計画書に基づき、各自あるいはグループで調査研究を進めます。

ゼミ風景⑤

(5) 調査研究の進捗や成果について、パワーポイントを使っての中間発表を1~2回、レポート素案での最終発表を1回程度行い、ゼミ全体で議論します。

ゼミ風景③

(6) 1月末頃には、それまで積み上げてきた研究成果をまとめ、レポートを作成・提出します。

* 更には、4年生で「卒業研究」を履修し、より深く研究を継続することができます。
* 夏休み以外でも、ゼミ生の希望によりフィールド見学を行ないます。

4. 過去のゼミ生の研究テーマ(例)

  • 「ゴルフ場で使用される農薬の環境的影響」
  • 「広島修道大学構内新校舎建設事業の自主的ミニ環境アセスメント」
  • 「環境アセスメントの住民参加:事業者と住民の目指すべき方向」
  • 「大規模林道建設問題への地域住民の取り組み:細見谷の大規模林道事例」
  • 「広島高速道路建設における周囲の環境影響」
  • 「開発途上国における環境の経済評価:特に農林業開発事例について」
  • 「デジタル時代を安全に過ごすために:携帯電話を中心とする電磁波の影響」
  • 「鞆の浦埋立て架橋建設計画を巡る環境アセスや住民参加の有効性」
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